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【レビュー】ほとりの朔子

ネタバレ注意!

この映画評は私自身の鑑賞メモという扱いで、基本的に本編の内容に触れる事が多いものです。
作品をご覧になっていない方は鑑賞後に読んで頂く事をオススメ致します。
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登場人物はそれほど多くないのに、話が進むにつれてその人間関係がどんどん複雑に絡んで行く、
ただ、その語り口はすごく自然でテンポが良く、観ていて興味をどんどん引かれる。

この作品で演出の一番のポイントは「語らない」事だと思いました。
『それは内緒』というセリフが劇中何度か出てきます。
その中身は語られる事もあれば、語られないものも多くあります。

「言葉にせず、空気を読め」というある種日本人独特のコミュニケーションは大人になるにつれて身に付いて行くもの。
朔子(二階堂ふみ)がこの短い夏休みに体験した「ちょっと大人な世界」はある意味「語らない」世界の一つだったのではないかと思います。
淡い恋心と静かな失恋、男女の一線を超えるタイミングとその後のドロドロした関係、もちろんお互いに本音は語らない。
登場人物たちが語っていないのはもちろん、映画そのものでも直接的に見せていない所がすごく多いです。

また、もう一つテーマとしてうまく使われていたのが、
終盤に海希江(鶴田真由)が朔子に語る「実は他者の方が自分の事をわかっている事もある」といったセリフ。
朔子が最後に『やりたい事がなんとなく見つかった』と成長を感じるきっかけになったこの言葉。
実は前半の西田(大竹直)がビーチで自分の作品について語っていた「客観の中にも主観は入っている」といったちょっと小難しい話の部分でも触れられていて、説得力の強いメッセージになっています。

タイトルの「ほとり」が意味する所は、何か大きな世界の「手前にいる」事と考えました。
人生の中で18歳という大人の「ほとり」に立った朔子がこの1週間ちょっとの夏休みでちょっとだけ成長して帰っていく。

舞台挨拶で深田監督が語った”この映画がどういう映画か”について
『何か特別に伝えたいメッセージやテーマがあったというよりかは純粋に俳優たちを描きたかった』とおっしゃっていましたが、
制作の早い段階で主要キャストが決まり、それぞれのキャストが現場で醸し出す空気感を生かしたセリフというのを大事にしたとの事です。

そのセリフの”間”や効果的に使われる長回しのカットと合わせて、すごく自然な空気感、そして”行間”のある作品でした。

今年を代表する一本である事は間違いないです。