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【レビュー】オンリー・ゴッド

ネタバレ注意!

この映画評は私自身の鑑賞メモという扱いで、基本的に本編の内容に触れる事が多いものです。
作品をご覧になっていない方は鑑賞後に読んで頂く事をオススメ致します。
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2012年公開の「ドライブ」でコンビを組んだ監督ニコラス・ウィンディング・レフンと主演ライアン・ゴズリングの最新作。
「ドライブ」は全体を通した映像や音楽のクールさ、静かな語り口、バイオレンスだけど品がある感じ、そしてライアン・ゴズリングの色男っぷりが魅力的な映画でした。
今回もある程度そのテイストが入ってる事を期待して観てきましたが、想像を超える濃厚さでした。
特に今回はレフン監督の作家性やフェティシズムが出まくっています。日本で言うと園子温監督の映画を観ているようなノリです。
それはかなり独特な世界観で、観る人に何かを感じてもらおうとか、楽しんでもらおうといった配慮が一切無いものです。
そういう意味では一種のアートを見ている感覚ですかね。

セリフは極端に少なく、淡々と画で見せ、90分という短い上映時間も長いと思わせるぐらいの間と沈黙の使い方。
その静かさと反して攻撃性を煽るような”赤”を多用した画作りとバイオレンスなアクション。
舞台となるタイのバンコクも怪しく美しく見せています。

今回「神」と名乗り登場するチャンという元警官で謎の男。
ジュリアン(ライアン・ゴズリング)の相手として見ると敵のようにも見えますが、実は彼がこの話の主人公でもあります。
背中から取り出す刃先の角ばった刀で罪を犯した人間を容赦なく成敗する。
演出上はすごく恐ろしいキャラクターとして描かれるので、最初は無慈悲な悪役のようにも見えますが、次第に彼が行う裁きが「どうにもならない事」と感じられるようになります。
この映画の世界では彼は絶対的に正義であり神である、と語られるのです。

また、彼が裁きを終えると必ず行う「カラオケ」という儀。
タイではカラオケの扱いは日本のように興業的ではなく、より宗教的な意味合いが強いものとの事です。
罪人を裁き、そして自らを浄化させる為の儀式としてカラオケを歌う。
何度も繰り返されるその行為がもちろん異常な光景なのは間違いないのですが、彼が「絶対的である」事を象徴する為にしつこく描かれています。

そんな神のような存在であるチャンに力では敵わないと悟るジュリアン。
幼い頃から母親に支配される人生を送ってきて、その母親も最後には神に裁かれる。
長きに渡る支配から解放されたジュリアンは自らの罪を認め、神に裁きを被る。

といった話。

アンチカタルシスと言うのでしょうか、全くスッキリとした終わり方もせず、
ライアン・ゴズリングを”悪と戦う正義”の役という期待を最後まで持ってしまう人には全く受け入れられない映画だと思います。

自分としてはこれぐらい吹っ切れている映画を観れたというのは大変貴重でしたし、
今年の映画を語る上でもちろん外せない一本だったと思います。